「はいはい、いいから早く手洗い嗽。」
彼に促され洗面所に行くと
ふとあるものに目が止まった。
「・・・化粧落とし・・・?」
え、女物。待って。彼女持ち?!
「え、ねぇ彼女いるの・・・?」
「は?いねーよ。いたら家に呼ばねーだろ」
「じゃあ、なにこれ・・・」
化粧落としを指さすと彼は少し笑いながら
「あー、会社の歓迎会で女装させられて
その時に買ったやつだわ。
ちょーどよかったな。使えよ」
と言った。
わたしは部屋を見渡す。
確かに女性物はこれ以外何も見当たらない。
まさか、わたしに言い寄ってきた?ような手口でいろんな女の子引っ掛けてるんじゃ・・・。
「・・・帰る」
わたしは荷物をまとめるとそそくさと玄関まで向かう。
「は?なんで?」
「あなた、怪しい。怖いから。」
すると手を掴まれ
「いや、意味わかんねーから。
とりあえず風呂だけ入ってけよ?
もう入れ始めてるし」
と彼はズルズルとわたしを引きずるとソファーに座らせた。
「別に俺はソファーで寝るしベッド使っていいし」
あ、あと髪も乾かしてやるよと付け加えた。
