お兄ちゃんの友達[完]

「カナコちゃん、小さいころからこの街に住んでいるんでしょう?」

担当者の車に乗り込み、シートベルトを締めながら顔だけ私を覗き込む河合さん。

「はい、家から出たことないので」

「コウヘイもそうだけどさ、二人の育った街なら、大丈夫だと思うんだよね」

何が言いたいんだろう?
窓の外を眺めながら、河合さんはぽりぽりと頭をかいた。

「俺も、カナコちゃんと同じ町に住みたいんだ」

外から私へ視線を移動し、にこりと笑ったと思ったら、真剣な顔をして私の手を握ってきた。

担当者がちらっとルームミラー越しにこちらを見て、目が合ってしまった。すぐそらされたけど。

突然のことに耳まで赤くなるのを感じながら、手を離すこともできずにただうつむいてしまう。

「話の続きはあとでね?」

こそっと耳元でそう囁いた河合さんは、手をつないだまま外の景色に目を向けた。