環達が帰ってからも菜穂は目を覚まさない。

まだ30分しかたってないもんな。

時間が長く感じる。

またこんなふうになられたら嫌だ…

やっぱり話した方がいいのか?

いや…もしかしたらパニックになって大変な事になるかもしれない。

ここは我慢だ…。

とりあえずおばさんに電話…

部屋に小さいはずの着信音が響く。

『もしもし?』

「もしもし。俺です。赤城です。」

『どうかしたの?今日はケーキを食べに行くって楽しみにしてたから。』

「それは午前中に行ってきて…それで、ちょっと…」

『何かあったの?』

急におばさんの声が少し険しくなる。

「えっと俺のピアノをきいていたら何かを思い出したらしく…倒れてしまって…」

『…そっか?菜穂の記憶を戻そうと頑張ってくれたのね?』

「…すいません。菜穂を危険な目にあわせて…」

『大丈夫よ?直也君は頑張ったのでしょう?』

おばさんの言葉が今は凄く身に染みる。

「…ありがとうございます。今日は家に泊めていくので。怖くて…帰らせたくなくて…」

『…菜穂のことを考えてくれてありがとうね?』

「はい。何かあればまた連絡するので。」

『わかったわ。』