姉は生徒会の仕事、挨拶運動があるから、私より少しだけ早く行く。




だから、私たちには別々の運転手がついている。とは言ったって生徒会の仕事がなくても私達は別々で行くのだけれど。





「花蓮お嬢様」





彼、長嶋は私の運転手兼秘書だった。優秀で父には将来を期待されている人材。





「なあに?」


「今日のスケジュールをお伝えします」


「どうぞ」


「いつも通り学校を終えて頂き、7時半から三ツ矢銀行の頭取との会食後、8時半からはホテルにてパーティーがございます」



「そう、父から何か言伝は?」


「このメモリーを渡せばわかると」




そう言って手渡されたのは青色のメモリーカード。これにはそれなりの機密情報が入っているのだろう。私は鞄を開きPCを取り出した。




中身は案の定、想像していた通りのものだった。





「お嬢様、駄目そうならすぐに言ってくださいね」




長嶋はミラー越しに私を見た。





「駄目?」


「顔色が優れないので。」


「まあ、倒れはしないわ」





こうして体調まで気遣ってくれるなんて、いい人だ。けれど彼はあくまでも父の手駒だということを、忘れてはならない。