「おはよう」






その一言で始まる一日は、酷く重く感じる。
使用人によって皺一つない、制服を用意された私はそれを着て食堂へ向かう。


そこへはもう家族団欒が出来ていて、そこへ入って行くのは少し躊躇われた。




「おはよう。カレン」




「おはようございます。お姉さま、お父様、お母様」




「おはよう」





そう挨拶して、私が席に着くと直ぐにオムレツとフレンチトーストが運ばれてきた。
私が声を出さなくても、彼らの会話は進む。
ふとお母様が言った。




「もっとカレンも、お姉ちゃんみたいに」


「努力します」





その会話は何回された事か分からない。こんな出来損ないを愛してくれているのだから、母はよく出来た人だ。





そんな人を騙すしかない私はなんて汚れているのだろうか。



サッサと食べ終えてしまった、私は席を立つ。
そんな私を監視するかのように、父は私に声を掛けた。



「カレン。分かっているだろうな」



その言葉の真意を掴んだ私は、冷たい声を返した。




「ええ、滞りなく」



父も私も汚い。溝に浸かった手で、世界を腐敗させていく。