パタン…


私を気遣ってくれたのか、アルファは扉を閉めた。





「これも誰かにとっての真実さ。ソラ、君にとっては偽物の真実でもね。


――虚実の扉。

だから自分にとっての真実を見つけることは難しい。
惑わし惑わす“虚実の扉”にご注意を」


アルファはおどけた様子で肩を竦めた。





「虚実の扉…?」


あることないこと…。
本当と嘘。




「そう、虚実の扉…。

説明が難しいね。
何ていうのか…この扉たちはどれも真実なんだよ。
でもそれらの真実は見る人によって嘘にも本当にもなりうるわけだ」




話が難しくて頭を捻る私の腕を、アルファはそっと掴んだ。




「…降りようか」


「――うん」




ゆっくりと下降していく私達。


この塔内の理はアルファの意思で決まる。








「はい、着地ー」


ふわりと足が地面につくと同時に、重力が帰ってくる。




「本日のフライトは如何でしたか?」


「んー、まあまあ」


私はアルファににやりと笑ってやった。

アルファはおどけて碧の右目を丸くしてみせる。




キィ…



出口を開きながら、アルファは私に小さく囁いた。


「――ソラと“彼”のこと応援してるから」


いたずらな笑みを浮かべながら私に手を振るアルファ。



「ばいばい。
ありがとっ、アルファ」


「じゃあな、ソラ。
鍵…きっと見つかるよ」




ロイの姿を思い浮かべ、真実の廻廊を後にする。




全てを見通す“真実の廻廊の管理人”



ゆらり揺れて漂う真実。
真実は謳うように君に囁いて