アルファ。
真実の廻廊の管理人。


真実の廻廊と言っても、建物自体は天高く聳える巨大な塔。

いつしかそう呼ばれるようになった所以は、恐らく塔を取り巻く廻廊が目を引くからだろう。









「あ、ソラ。中入って」



「うん。お邪魔しまーす」



アルファに導かれ、塔内へ足を踏み入れる。




私はいつもここに来ると不思議な感覚に襲われる。



大地から生えた象牙のような外観の塔。
しかし中に入ってみると不思議なことに、とてつもなく広いドームのような建物なのだ。



天井を見上げれば無数に漂う扉の数々…。



色も形も大きさも様々な扉。どれ一つ同じ扉はなく、同じ真実はない。





「そうだ、ソラ。今日は何しに来たんだ?」



アルファは私にそっと微笑みかけた。



無造作だが綺麗な金髪。だらしなく着崩した純白のスーツ。
そして左目に白の眼帯。少し長めの前髪から覗く右の瞳は碧空のような青。



風変わりな塔。
風変わりな管理人。





「アルファなら私がここに来た理由、見抜いてるんでしょ?」



アルファは青い右目を細める。



「あー、そうだなぁ…。
――探し物かな?誰かとの約束?」


アルファは眼帯の上から左目に触れた。

さすが“真実の廻廊”の管理人。私の目的までお見通し。



「はははっ。やっぱりアルファに隠し事はできないね。眼帯の意味あるの?」


「あるよ。眼帯してないと知りたくないことまでわかっちゃうし、プライバシーの侵害になっちゃうだろ?

お互いの為にも眼帯は必要だね」





アルファの左目は真実を見抜く。
普段はスーツに合わせた白の眼帯を着けて隠しているが、私は一度だけアルファの左目を見たことがあった。



青く澄んだ右目とは違い、妖しく輝く金色の四白眼。異様な程虹彩が小さかったのを覚えている。





『君は今、俺のこと怪物みたいだって思った。
そうだろ?』



怒るでもなく、悲しむでもなく、アルファは私に笑いかけた。



それが最初。