「まあ、ソラもいろいろ大変だな。
俺も手伝うから。
何について調べればいいんだ?」
ゼロは机に肘をついて腕を組む。
手伝ってくれるようだ。
ゼロにならロイのこと話してもいいかな…。
否、むしろ話さなきゃ辻褄が合わなくなる。
私はじっとゼロを見つめた。
変人だけど真っ直ぐなお人好し。
物知りだし、人間を超越した力を持っている。
「何?俺のことじっと見つめちゃって。
なんか照れる」
また取り違えられた。
ゼロは照れた様子で鼻を擦っている。
私は薄ら、愛想笑い。
「――ロイ」
私の言葉にゼロは首を傾げた。
「私の友達の名前。白い箱庭で私を待ってる」
“白い箱庭”。
ゼロの細く鋭い眉が寄った気がした。
「箱庭…ねぇ。その友達訳ありだな。
あそこは辺境の地。
確か文献があったはず…。
ちょっと待ってて」
ゼロは椅子に座ったまま瞑想する。
部屋が暗転。
空気がずんと重くなった。
これが悪魔の力。
ゼロを取り巻くように広がる紅色の文字の羅列。
読めない詞。
古代の詞なのか悪魔の詞なのか…。
やがて本棚に並ぶ幾冊もの本の中の一冊だけが光り始めた。
その存在を主張するようにかたかた揺れる。
ゆっくりとゼロが閉じられた瞼を上げる。
暗闇で妖しく光る、紅い瞳に思わず心奪われる。
カタン…
本が一冊床へと落ちたことを合図に部屋に光が戻った。
「あー。一冊しかなかったみたいだ」
ゼロは本を拾い、にっと笑った。

