「―――今から少し変な話をするね…」



ふいにロイが口を開いた。今日のロイはよく喋る。




「変な話…?
うん、どうぞ」



私はよくわからないまま、ロイの話に耳を傾けることにする。


雰囲気のせいか、不思議なくらい魅力的なロイの声。

私の耳に心地よく染み渡る。





「――ソラ。
もし君が自分自身が何なのかわからないとしたら…どうする?」





不思議な質問だった。
ロイはいつもそんなことを考えてるのか。




何だか難しい質問…。
本当の意味で自分自身を知る人など存在するのだろうか。



残念ながら私もわからない。



「うーん……よくわからないなぁ。

でも私なら、きっと答えを追い求めると思う」




私の答えに納得したのか、ロイは頷いてみせた。





「そっか、ソラらしい答えで少し安心した。



じゃあ――もし自分が他の人とは違う、何か忌まれる存在の者だとしたら…君は――」





ロイは後半、凄く早口だった。
勢いに任せて言葉を紡いだのだろう。




今にも壊れてしまいそうなロイ。

悲しげな口元。





私は何て答えればいい?



何も言えないまま、ロイを見ていることしかできない。








「―――あ、ごめん。本当に変な話だよね。


僕…少し取り乱しちゃったみたい」




苦し気に笑うロイの姿は痛々しく、私は泣いてしまいそうになる。





何でそんなこと聞くの?

何でそんなに無理して笑うの?






「そんな、ロイが謝る必要ないのに。


でも一つ聞かせて…?
どうしてそんな質問したのか―」