ロイは鳥籠の中央に置かれた箱を持ってゆっくりと歩んできた。
おぼつかない足取り。
重い箱なのだろう。


白と黒の配色、あまり大きくない宝箱のような感じだ。




「それは何?」



私が問うと、ロイはどこか得意気な様子。


見えない目で箱を開ける手付きは慣れたもの。



中からは様々な“ロイの宝物”が顔を覗かせる。





金銀財宝などではなく、どれもこれも有りふれた物ばかりだった。


簡素なネックレスや、単なる色鉛筆、それから分厚い難しそうな本が何冊か…。

まだまだ箱の奥にも掘り出し物が眠っていそうだ。







ロイの宝箱。



私たちにとっては何でもないただの“物”であっても、ロイにとっては“宝物”。




がさごそと宝箱を漁るひた向きなロイを眺め、私は思わず微笑んだ。



目が見えないので、手で一つ一つ形を確認している。


「――ソラ、ごめんね。僕、包帯で目が見えないから手探りなんだ。
もう少し時間くれる?」



早く目的の物を探そうと、ロイはせっせと頑張っている。




辺りは段々暗くなってきた。夜風が肌を掠める。




「うん、大丈夫だよ。ロイの好きなようにして。

でも、よかったら手伝う?一緒の方がたぶん効率いいよね。楽しいし」




私が提案すると、ロイも深く感慨深そうに頷いた。



「それもそうだね。じゃあ、ソラも一緒に探そう。


長めの紐…、またはチェーンみたいなものがいいんだけど――」



ロイは楽しそうだった。
純粋に笑っていた。



私が柵から手を伸ばして助太刀すると、ロイはありがとうと囁く。



長い孤独な夜。
二人なら寂しくないよね。

ロイの笑顔は星屑に照らされて輝きを増した。