ざわざわと揺れる木々。
いつも遊び馴れている森なのに、道に迷った途端怖くなった。




手作りのお菓子の入った籠を握る手に力が入る。  


今日は得意のクッキーだ。お腹が減ったら食べようと、作ってきた。




こんな時はお菓子を食べるのが一番。


しかし、今は生憎お腹が空いていない。



「はぁ……」




仕方ない。
誰かが来てくれるのを待とう。




私は草の上に寝転んだ。

草ももちろんセピア色。
こうしていると私も森の色に染まってしまいそうな感覚に陥る。











“哀しくも美しい夜のワルツ
黒い月は赤い空に妖しく浮かぶ



ゆらりゆらり
最果ての海
私は今船を漕ぎだす”





何処からか歌が聞こえてきた。


綺麗で若干擦れた歌声。




私は歌声のする方へ、吸い寄せられるように歩み始めた。



どうせ迷ったんだ…。

今更どこへ行っても同じこと。








“泡沫の夢は貴方に囁く



何もかも壊してしまえばいいさ



そうして貴方は堕ちていく

奈落の底まで堕ちていく”





徐々に明確になってくる歌声。


誰が歌っているのだろう。







気が付けば光。
辺りは光のトンネルのようになっていた。






しまった…。


光の道筋だ。






気付いたときには間に合わない。






光が去った後、私はセピア色の森とは違う地域に来てしまったことに気付いた。
辺りは静寂に包まれていた。