読み終わった本はいつもサイドテーブルの上に置いてあると、先生から聞いていた。

確かにテーブルの上には、昨日図書館で探して先生に渡した『巨人たちの落日・上巻』が置いてあった。

その厚い本を返却するために引き取り、今日、借りて来た『巨人たちの落日・中巻』をトートバッグから出した。

「結構、厚い本なのに。二宮陽輝、ほんとに読むの早い……」

最近は読書が趣味のくせに、読むのが遅い私は思わず溜め息をつく。

まだ読んではいないが、次に借りようと思っていた。確か、第一次世界大戦の話だっけ、とバッグに入れかけた上巻を開いて冒頭に目をやる。彼が借りる本には、必ずといっていいほど引き込まれる。

思った通り。やっぱり面白そう。今度、借りよう。

ポンと本を畳んで気がつけば、病室の壁の時計が五時五十五分を指している。

「やば……」

慌てて手にしていた本をトートバッグに放り込み、急いで病室を出た。