「いい加減唆すの、やめてもらいますね」 彼が深呼吸をしながら言う。 千歳ちゃんは視線を僕から彼へ移した。 今にも噛みつきそうなその目付きは、拘束され、銃を向けられているとは思えない。 「ま、待って!」 やっとの思いで出した僕の制止の声だったが、虚しくも発砲音に掻き消されてしまった。 硝煙の臭い。力なく倒れる千歳ちゃん。彼の勝ち誇った表情。床に広がる赤い染み。 ……僕の前でまたひとつ、命が失われた。