もともとなんでも器用にこなせる私は、小さい頃から両親に期待されていた。

3歳から始めたお稽古事は、ピアノにバレエ、水泳、テニス、バスケットそれに英会話。

パパとママは私にいろんなことをさせてきた。


そして私も小さい時は純粋に楽しんでいたと思うんだ。

4歳のときにはピアノのコンクールで準優勝、5歳のときは英会話コンテストで特別賞。

賞をもらえることもパパとママが喜んでくれることも、とても嬉しかった。


そうやってどんどん増えていったトロフィーや賞状。

でも11歳のバレエのコンクールのとき。
足を滑らせて踊れなくなってしまった私はもちろん落選した。

「大丈夫、次頑張れば良いさ」
「そういう時もたまにはあるよね」

泣きじゃくる私にパパたちはそう言ってくれた。


でもその夜私は聞いてしまったんだ、パパとママの話し声を。

「正直がっかりね、今回のコンクールは初のトウシューズでの出場だったし」

「そうだな、こけてからも立ってなんとか続けて欲しかったなぁ」

ママの残念そうな声、パパの苦笑い。
耳に目に焼きついて離れない。


そっと忍び足で私は部屋に戻った。そして気づいてしまったんだ。

期待されてそれを裏切るとどんな気持ちになるかということを。