綾美はスポーツドリンクを口から離すと、手の中に収めた。

「話したくないならいいから」

小夜子はそう言ったけれど、
「――あの子…」

綾美は呟くように口を開いた。

「あの子?」

小夜子は聞き返した。

綾美が言っている“あの子”とは、先ほど駅のコインロッカーで話しかけてきた彼女のことを差しているのだろう。

「みち子は、幼稚園の時から仲良くしていた友達なの…」

綾美が呟くように、言葉を紡いだ。

「みち子ちゃんって言うんだ」

そう言った小夜子に、
「ここ、N県はわたしが中学卒業まで過ごしたところなの。

夏になるとこの海岸で開催されている花火大会に、みち子と一緒に行ってた」

綾美が言葉を続けた。

「そうなんだ」

小夜子が返事をしたことを確認すると、綾美は話を続けた。