ブラック企業で働いていた頃とは違い、休みはあるし、仕事も楽しい。

少ない給料で休みなく働かされていた去年とは違って充実している毎日を過ごしているが、1つだけ小夜子の心の中を支配しているものがあった。

――友達は作るものじゃなくて選ぶもの

幸代から由紀恵のことを聞かされたその日から、小夜子の心はこの言葉で支配されていた。

自分はどちらかと言うと友達もそれなりにいて、勉強や部活や人間関係での悩みは多少はあったものの、いじめなんてものは特にない比較的に平和な学生時代を過ごしてきた。

学生時代の友達とは今でも親交があり、何ヶ月に1回かは遊びに行ったり、飲みに出かけたりしている。

由紀恵のように友達を選ぶものだと考えたことはない。

(でも、社長はそう言う考えの持ち主なんだな)

幸代によると、中学生時代の同級生とは転校して以来1度も会っていないそうだ。

それはそうだろ、彼らは自分を裏切ったうえに浜島側について彼女と一緒になっていじめていたのだ。

もし自分が由紀恵と同じような立場だったら、彼女と同じ気持ちになるのは間違いないだろう。