【新】レンタルフレンド~お友達をお貸しします~

腕時計に視線を向けると、約束の時間である午後2時まで後15分だった。

「落ち着け、落ち着け…」

黒いリクルートスーツに身を包んだ光浦小夜子(ミツウラサヨコ)は深呼吸をした。

目の前には32階建ての高層ビルが真夏の太陽に照らされていた。

このオフィスビルの25階のところに、人材派遣会社『ハッピーライフ』が入っている。

今から小夜子はこの会社の面接に行くのだ。

黒いリクルートスーツには汚れやほつれはない。

その下に着ている白いシャツは昨日買ったばかりの新品だ。

肩まである黒い髪は、今は1つに束ねている。

ナチュラルメイクを施した顔は、特に化粧が崩れているところはない。

肌色のストッキングは伝染していない。

黒のローヒールのパンプスは汚れていない。

「よし!」

小夜子は気合いを入れると、オフィスビルの中に足を踏み入れた。