「それじゃ、仕事に戻っていいですよ。

今日も1日頑張ってください」

「はい、ありがとうございました」

小夜子が頭を下げて社長室から出ようとしたら、デスクのうえの電話が鳴った。

「あっ…わたしが出ます」

そう声をかけた小夜子だったが由紀恵は特に何も言わなかった。

小夜子はそれを肯定と捉えると、受話器を手に取った。

「もしもし、こちら『ハッピーライフ』です」

小夜子が受話器に向かって言ったら、
「浜島と申します。

こちらに社長の美作さんはお見えでしょうか?」

女性の声が聞こえた。

「はい、社長ですね」

小夜子は返事をして受話器を手で押さえると、
「社長、浜島さんと言う方からお電話です」

目の前の由紀恵に声をかけた。

「――…よ」

呟いているような小さな声で、由紀恵が言った。