「ええ、いいですよ」

小夜子は答えると、ガウチョパンツのポケットからスマートフォンを取り出した。

赤外線でお互いのアドレスを交換すると、
「ありがとうございました」

綾美はお礼を言うと、スマートフォンをカバンの中に入れた。

「それじゃあ、この辺で失礼します。

今日はありがとうございました」

綾美はペコリと頭を下げた。

「気をつけて帰ってくださいね」

小夜子が返事をすると、綾美は手を振りながらその場から立ち去った。

小夜子は彼女の姿が見えなくなるまで手を振った。

綾美の姿が見えなくなると、
「何だかいきなり大きな仕事を任されたかも…」

小夜子は小さく息を吐いた。

でも地獄のような就職活動の末に、ようやく内定をもらえたのだ。

給料はもちろんのこと、休みもあるし、福利厚生や残業代も申請すれば出ると言っている。