「ごめんくださーい」

小夜子は中に向って声をかけたが、辺りはシーンと静まり返っていた。

誰かが出てくる気配すらもない。

「勝手に入っちゃっていいのかな…?」

そう呟いて木製の床に足を置いたら、ギシッ…と軋んだ音がした。

「だ、大丈夫かな…?

途中からマンガみたいに床が抜け落ちるなんてことないよね…?」

自分の体重は平均だと言い聞かせながら、小夜子は目的の場所へと慎重に足を向かわせた。

1番奥の部屋に到着すると、ドアの横に書いてある表札の確認をした。

表札には“金子”と書いてあった。

コンコンとドアをたたくと、ドアが開いた。

そこから出てきたのはボサボサ頭に無精ひげの中年男だった。

「金子安里さんのお父様ですね?」

そう聞いた小夜子に、
「そうですが、あなたは…?」

中年男は訳がわからないと言った様子で聞き返した。