* * *

由紀恵の自宅はタワーマンションの18階だ。

その日も仕事を終えると、自宅へと足を向かわせた。

(今日も疲れたな…)

マンションの中に足を踏み入れてカードキーでドアを開けようとした時、
「――由紀恵?」

自分の名前を呼んだその声に、由紀恵は手に持っていたカードキーを落としそうになった。

その声に振り返って視線を向けると、
「――高子…」

米村高子はペコリと、小さく頭を下げた。

「何しにきたの?

と言うか、どうやって入ってきたの?」

そう問いつめた由紀恵に、
「謝りにきたに決まってるじゃない。

マンションの前でずっと張り込んで住人と一緒に入ってきたの」

高子は答えた。