「――うっ、ううっ…」

安里は両手で隠すように顔をおおって泣き出した。

(うわーっ、泣き上戸ってヤツか…)

面倒くさいタイプにつかまったなと、小夜子は思った。

(もう夜も遅いから早く帰りたいのに…)

小夜子が心の中で呟いたその瞬間、
「――どうして遊んじゃダメなの!?」

安里は大きな声で叫んだ。

「えっ、はい…?」

突然叫んだ安里に、小夜子は訳がわからなかった。

(えっ、まさかの怒り上戸?

遊んじゃダメって、さっきまで遊んでたんですけど…)

これも面倒くさいタイプだと、小夜子は思った。

「安里だって遊びたいのに!

安里だってみんなと一緒に遊びたいのに!

どうして安里だけ遊んじゃダメなの!?

ねえ、何でなの!?」

安里は怒鳴りながら手当たり次第に物をつかんで、それを投げつけてきた。