安里の自宅であるタワーマンションの前でタクシーを降りると、先ほどと同じように安里の手を自分の肩にかけて18階まで運んだ。

彼女のカードキーを使って玄関を開けると、
「はい、つきましたよー」

小夜子はそう言って安里を家の中へと入れた。

「金子さん、家につきましたよ」

安里の肩をたたいて声をかけたら、それまで閉じられていた彼女の目が開いた。

「――家…?」

安里は小さな声で呟いて、キョロキョロと首を動かして部屋の中を見回した。

「そうですよ、家ですよ」

小夜子は声をかけた。

「それでは仕事が終わったことなので、わたしはこの辺で失礼させていただきます。

料金につきましては振り込みで、自宅に封筒が届きますのでその指示に従って…」

「――ねえ、どうしてなの…?」

話をさえぎるように呟いた安里に、
「な、何がですか?」

小夜子は訳がわからなくて聞き返した。