家族とはもちろん、友達と行くのも楽しいだろうな。

そう思っていたら、
「お友達をお貸ししましょうか?」

鈴を転がすような美しいソプラノの声が後ろから聞こえた。

その声に驚いて振り返ると、美しい女が微笑んでいた。

真夏なのに背中まで伸ばしたストレートの黒い髪は、花柄のバレッタでハーフアップにまとめられていた。

ぱっつん前髪の下から覗く二重の大きな瞳に小さな鼻、ピンク色の唇はまるでよくできた人形のパーツのようだ。

肌は白くて、手足もスラリと長い。

爽やかな水色のAラインのワンピースに黒いレースがついたレギンスを身につけているその姿はモデルだ。

彼女は手元にある白い日傘をクルクルと回しながら、綾美を見つめていた。

「あ、あの…」

年齢は20代後半から30代前半と言うところだろうか?

こんな美女に声をかけられたのは生まれて初めてなので、綾美は戸惑いながら返事をした。