半ば強引に記憶を封じ込めて、
「私も何人かに声をかけてみる。

1人くらいはヒマしている子がいるかも知れないし」

安里は言った。

「ヒマって、あんた…」

美紀が苦笑いをしたので、
「だってー」

安里は笑った。

表面上はどうにか笑っていたものの、心の中は複雑だった。

――安里ちゃん、これはあなたのためなの

――あなたのためを思ってるから言っているのよ

――あなたのためなんだから

(“私のため”って何なのよ!)

そう叫びたくなる気持ちを、安里はどうにかこらえた。

何もかも全てを我慢して、犠牲にしていた18年間とはもう違う。

今は洋服やアクセサリーはもちろんのこと、食べ物や飲み物だって何でも手に入ることができるのだ。