「最終面接の時、私はあの子にこの質問を投げたの。

“どうして我が社を希望したんですか?”って」

その出来事を思い出すように、由紀恵は遠い目をした。

「それに対して、春田さんは何と答えたんですか?」

幸代は続きを促した。

「“自分のように苦しんできた人やつらい思いをしている人を支えてあげる存在になりたいからです”って、あの子はそう言ったの」

そう言った由紀恵に、
「それは、どう言う意味なんですか?」

幸代は聞いた。

「あの子、実家が母子家庭だったらしいの。

まあ、母子家庭と言っても父親は他に家庭を持っていたらしいんだけどね」

「いわゆる、“お妾さん”と言うヤツですね」

そう言った幸代に、
「ええ、そうよ」

由紀恵は首を縦に振ってうなずいた。