2人で玄関に足を踏み入れると、
「ただいまー」

各務原が中に向かって声をかけた。

「はいはーい」

奥の方からパタパタと足音を立てながら現れたのは、ふくよかな中年女だった。

彼女が各務原の母親のようだ。

「こ、こんにちは…」

愛香はペコリと小さく頭を下げた。

「母さん、彼女がこの間話してた白川愛香さん」

各務原が紹介をした。

「は、初めまして、白川愛香です…」

自己紹介をしてもう1度頭を下げた愛香に、
「あら、かわいらしいお嬢さんじゃないの」

各務原の母親は目尻を下げて、愛香に笑いかけてきた。

「あ、はい…」

愛香は返事をすると、小さく頭を下げた。

「まあ、こんなところで立ち話もあれだからおあがんなさい」

各務原の母親に促され、
「はい、お邪魔します…」

愛香は靴を脱ぐと、家の中に足を踏み入れた。