高校入学と同時に、父親と一緒にこの街にきた綾美には友達と呼ばれる存在が1人もいなかった。

小さな頃から引っ込み思案で思ったことを口に出すことができないその性格もあって、新しい街での新しい学校生活になじむことができなかった。

明日から始まる夏休みに周囲は浮き足たっているが、友達がいない綾美は明日からの夏休みを憂うつに思っていた。

母親と6歳年上の姉がいる地元に帰ろうかと思ったけれど、サービス業を営んでいる父親のこともあるのでやめた。

父親は遠慮しなくてもいいと言っていたけど、綾美はそれを断った。

(だって地元に帰っても、わたしの居場所はないんだもん)

真夏の太陽の下を歩きながら、綾美は息を吐いた。

学校を後にすると、人通りが多い街中をブラブラと歩いた。

ふと視線を向けると、旅行会社があった。

格安の海外旅行ツアーや有名テーマパークの中にあるホテルに宿泊できるツアーなど、いろいろなツアーが貼られている広告を綾美は見つめた。