「ハンガリーのことわざ“逃げるは恥だが役に立つ”と言うように、恥ずかしい逃げ方だったとしても生き抜くことは大切だと思う。

でも、いつまで逃げてるつもりなの?

いつまで過去から目をそむけてるつもりなの?

いつになったら過去と向きあって、前を向いて歩いて行くの?」

小夜子は綾美の手をとった。

「引っ込み思案だからと言って、いつまで過去から逃げるつもりなの?

例え過去から逃げたとしてもあなたが勇気を持って真正面から過去と向きあわない限り、過去はいつまでも追いかけて死ぬまでつきまとってくるわ。

過去と向きあうことは、つらいことだと思ってる。

でも過去と真正面から向きあわなければ、前を向いて歩くことはできない。

真正面から過去と向きあって、時には耳を傾けて話をする時間も大切だとわたしは思うよ」

小夜子がみち子に視線を向けたので、綾美もつられるようにみち子に視線を向けた。