小夜子はその様子を黙って見ることしかできなかった。

「光浦さん、大丈夫ですか?」

幸代に声をかけられた瞬間、小夜子はその場に崩れ落ちた。

「――あっ…」

手に持っていた書類はクシャクシャになっていたうえに、汗でベタベタになっていた。

躰が震えていて、声を出すことができない。

「光浦さん、戻りましょう」

幸代の肩を借りて、小夜子はやっとの思いで立ちあがることができた。

震える足で社長室を後にして、オフィスに戻って自分のデスクに腰を下ろすと、ようやく躰の震えが収まった。

一部始終を見ていたと言うこともあってか、頭がクラクラしている。

目がチカチカしていて、喉はカラカラに渇いていて、気持ちが悪かった。

背中に流れる冷や汗のせいで、服が肌に貼りついてるような気がする。

小夜子は目を閉じて何度も深呼吸を繰り返した。