どうにか終電に飛び乗ると、無事に家に帰った。

「小夜子ちゃん、ありがとう」

泣き腫らした目でお礼を言った綾美に、
「また何かあったら言ってね」

小夜子は笑顔で言った。

「おやすみ、小夜子ちゃん」

「おやすみ、綾美ちゃん」

そう言って綾美と駅で別れると、彼女の背中が見えなくなるまで見送った。

綾美の背中が見えなくなったのを確認すると、
「あっ、しまった」

小夜子は思い出して、カバンからスマートフォンを取り出した。

両親には遅くなると言う連絡を、会社には残業の連絡を入れるのを忘れていた。

事実、着信履歴には両親と会社からの着信で埋まっていた。

両親と会社にそれぞれ連絡を入れると、小夜子は駅を後にした。