明日から夏休みが始まる。

「じゃあ、またねー」

「来週の金曜日に駅前ね」

「ライブ楽しみにしてるからー」

「ねえねえ、隣の県にある遊園地に行かない?」

「明後日の小旅行、楽しみだね!」

教室のあちこちから飛び出してくる会話を交わしているクラスメイトたちは、明日からの夏休みが楽しそうだ。

いわゆる、“リア充”たちの彼らを教室の隅で荷物をまとめていた1人の少女は気づかれないように息を吐いた。

(みんな、すごく楽しそう…)

少女ーー望月綾美(モチヅキアヤミ)は、早足で逃げるように教室を後にした。

下駄箱で上履きからローファーに履き替えると、カバンから上履き袋を取り出してそこに上履きを入れた。

校舎を出ると、真夏の強烈な日差しが綾美を照らした。