俺は一歩踏み出し、左手を伸ばした状態のまま固まっている。


目の前の光景が夢のようで……―


これが現実ならば神様はなんて残酷なんだ。


あと少しで朝日が昇りそうな時間帯にマンションの前で抱き合う男女。


2人はマンションの中へと消えて行った。


あの2人がこの後することなんて、想像しなくてもわかる。


何が悲しくて、他人のラブシーンなんか目の当たりにしなきゃいけないんだ。


しかも……


お前のそんな姿を…――


やっとの思いで、煙草に火をつけた俺はゆっくりと歩き出す。


俺がいけなかったんだ。


俺がお前に近づいてしまったから……


こんな風に待ち伏せした俺が悪い。