2杯目のグラスを空にしたあたしはお金をカウンターに置いた。
「帰る」
「また来いよ」
立ち上がるあたしを話が途中だなんて言って、文ちゃんは引き止めたりはしない。
「あたしが来ないとこの店は客がいないからね」
「お前が来る日は特別に貸切にしてやってるだけだ。それより、2人の男に言い寄られてるのか?恋の相談ならいつでも聞くぞ」
あたしはドアにかけた手を一度はずし、文ちゃんの方へと振り向いた。
「そんなとこかな?あたしはモテるから、大変なの。頼りにしてるよ。文ちゃん」
チャリーン
風鈴の音が耳に残っているまま、夜の街を駆け抜けた。
胸の中には豊を抱えたまま……―


