いくつもの小路を曲がり、辿り着いたのは“EDUTILOS”というバー。
大きなビルとビルの間にひっそりと佇む、このバーはあたしの行き付けだった。
ドアを開けるとチャリンチャリンと風鈴が鳴る。
その音を聞きながらいつもの席に着く。
「久しぶりだな」
「そうかもね」
カウンターしかないこの店はいつ来ても客なんていない。
どうやって成り立っているのか不思議なくらい、流行っていない店。
それでも、あたしにとっては一息つける逃げ場所だった。
「新しい店はどうなんだ?」と言いながら注文していないのに、あたしの前にはカクテルを置いてくれるのがここのマスター。
「まぁまぁ」
「お前はいつもそうだな」
優しい笑顔を向けてくれる、このマスターこと文ちゃんとの出会いはスナック時代だった。
夜の世界など何もわからないあたしに接客の仕方を一から教えてくれたのは文ちゃん。
文ちゃんはあたしが働いていたスナックでボーイをしていた。
ボーイというよりは雑用係。
食器を洗ったり、女の子を送迎したり……
あたしがスナックをやめる少し前に文ちゃんは独立をした。
昔から自分の店を持つのが夢だったらしい文ちゃんはこの流行らない店をオープンさせた。


