まだ、寝ぼけた体に鞭を打ちながらタイヤを運ぶ俺は夢の中にいる気分だった。


昨日の翔の話……―


そればかりが頭の中をグルグルと回っている。


翔の口から出た言葉はどれも信じられないものばかりで、俺はどうやって家に帰ってきたのかもまったくと言っていいほど覚えていない。


ただ、アイツの名前が俺の耳から離れない。


“カナ”


翔が何度も呼ぶその名前を俺も呼びたかった。


ずっとずっと呼びたかった。