「ヘブンの頭はってたんだろ!そんな情けねぇ声出すな!!」


始めて感情をあらわにした一志さん。


でも、この時はそれが何だか心地良かった。


「ついでにもう一つ言わせてもらうとな。信念を貫いたことによって工場が潰れたとしても、親父さんは負けじゃねぇと思う。親父さんは人生の勝ち組だ。」



最後に言われた言葉の意味はわからない。


でも、カナの待つ家に向かう俺の頭にはその言葉がこべりついていた。


「今日はありがとな。」


「いいや。俺もいい話が聞けた。」



煙草を挟んだ手を頭の上にあげた秀に一瞬視線を向け、俺は車から降りた。


頭上に広がる、この真っ暗な空はあの頃と変わらねぇな。