でも、今までみたく逃げ出すことは出来ない。


自分の身を守るために、姿をくらますことだって……


これはあたしの問題だけど、あたしだけの問題じゃない。


豊にだって知る権利も、考える責任もある。


そして……

このお腹の中では確実に命が育っているんだから。


「ふぅ~」っと大きく息を吐いて、ゆっくりとお腹をさすってみる。


まだ、ぺちゃんこのここに命がある。


信じられないけれど、これは現実なんだ。


あたしはこの瞬間、混乱はしていたけど、この命を愛しいと思った。


これで豊のそばにいれる。

あたしはもう一人じゃない。


本当に心の底からあなたに愛情という感情が芽生えたんだ。


でも、それは一瞬のことで……


あたしはすぐにあなたの命を奪うことを考え始めてしまう。