「おい……カ……きろ。」


遠くであたしを呼ぶ声がする。


「どこ?」


豊の声だってことはわかってるのに、いくら探しても豊の姿は見当たらない。


「豊……どこ?」


辺りは真っ暗で、たった一人で蹲るあたしは不安のあまり泣きそうになった。


その時……


ドカっ


「……へっ?」


一瞬にして明るくなる視界。


見上げた先には、あたしを見下ろす豊の姿。


「いつまで寝てんだよ。起きろ。」


腹立たしい豊の台詞にさっきまでのは夢だったんだと気付く。


この男はあたしを足で起こしたんだな。


布団から不自然にはみ出たあたしの体に、先程聞こえた音。


なんとなく、背中に蹴られた感触が残ってるし。


優しくとまではいかなくても、普通に起こせよと心の中で文句を言いながら、あたしは寝室を出た。