「どけ。」
あたしの膝枕で寝息を立てていた翔を蹴飛ばす豊。
「おい。寝るぞ。」
翔をよけるとあたしの手を引き、寝室へ……
「あたしは眠たくないけど。」
あたしの言葉など完璧に無視。
豊はあたしを抱き枕のように抱えながら横になると、すぐに寝息をかきはじめた。
「はぁ~。」
あたしも寝るしかないってことか。
豊の腕の中から抜け出すことを諦めて、目を閉じるとなんだか温かな気持ちになる。
そういえば……
豊とこうして眠るのは久しぶりだ。
体を重ねることはあっても、眠るときはいつも背中を向け合って寝ていた。
だから、豊の心音を感じながら目を閉じるのは久しぶり。
トクトクトクトク
あたしはいつの間にか眠りに引き込まれていた。


