「カナ。」
「ん?」
窓の外を眺めているカナに声を掛けると、一瞬視線だけをこちらに向けて気の抜けたような声を出す。
「今日は何か予定あるのか?」
「何もないけど。」
日に日に元気がなくなるお前を見ていると胸が痛む。
「なら、ちょっと頼まれてくれないか?」
「なに?事によるけど。」
「飲み物買ってきてくれ。」
「冷蔵庫にあるけど。」
「あれじゃ、足りねぇ。」
「どんだけ飲む気だよ?」
お前は変わっていなかったのかもな。
あの頃のように……
女のくせに口が悪くて、俺に一々反抗する。
何かあると一人で抱え込んじまう所も、素直じゃない所も。
表面的にはどうであれ、お前の本質的な所は何も変わっていなかったのかもしれない。
俺が見ようとしなかっただけで。