大人達には馬鹿だって言われるようなことだって、あの頃は真剣だった。


今と比べると、全力で駆け抜けていた気がする。


ピピピッ


寝室からピッチのアラームが聞こえてくる。


もう、そんな時間か……


さぁ、今日もこれから自分の体を売り物にして、札束を手に入れるんだ。


懐かしい思い出に浸っていれば、その分今いる現実が虚しく思えてしまう。


ピッチのアラーム音に助けられたあたしは、アイツの顔を思い浮かべてしまう前に仕事へ行く支度に取り掛かった。


シャワーを浴びて、もう板に付いてきたメイクを始める。


お洒落に何の興味もなかったあたしの最初のメイクは酷かっただろうな…


現にスナックのママに奇声をあげられたくらいだし。

伸び続けている髪の毛をドライヤーでブローすれば行く準備は完了。


価値のわからないブランドバッグを手にして、まだ明るい外へと足を踏み出した。