「おぅ!どうした?」


電話越しに秀の声が聞こえた。


「車借りれねぇか?」


「いいぞ。」


「家まで取りに行けば良いか?」


「いや。俺が行く。今は?」


「昔のたまり場。」


「あっ?なんでまた?まぁ、いいや。取り敢えずそっちに向かう。」


「頼む。」



秀と電話を切った後もぶつぶつと文句を言っているカナを放置したまま、俺は外へと出た。


それにしても、本当に懐かしいな。


“ヘブン”を卒業してからというもの、この辺に来ることはなかった。


お前がいなくなってからは、意識的にこの場所を避けていた気がする。


煙草に火を点けて、公園の中へと足を踏み入れる。


何もない変わっちゃいない。


目を閉じれば、大量のエンジン音が聞こえてきそうだ。


生きてるって感じていたあの頃に戻りてぇ。