「……もつ。」
「なんだよ?」
俺の胸の中に顔を埋めているカナが何か言っている。
俺はこのあり得ない偶然に浸ってたいってのに、ムードも糞もあったもんじゃねぇ。
突然、俺の体を引き離したかと思うとカナは俺を睨み付ける。
「なんだ?」
睨まれれば睨みかえす。
俺の悪い癖がまた出てしまう。
「人の荷物、放り投げてんじゃねぇよ!!」
「あっ?」
「あ、じゃねぇ。」
俺の左後ろに回り込んだカナはしゃがんで何かをしている。
その光景を見て、やっとカナの言葉が理解できた。
そうか……
カナを抱き締める前、俺はカナの荷物を持っていたんだった。
その荷物を放り投げて、カナを抱き締めたってわけか。
「わりぃ。」
変形した段ボールを持ち上げながら、俺を睨み付けるカナの顔はあの頃とちっとも変わっていなかった。


