二度寝がしたくて、なるべく目を細めながら歩いてみたものの、ジャーっという水音で一気に眠気は吹っ飛んでしまった。


仕方なく、リビングのソファーに横になってみるけど、やはりこの広さが落ち着かない。


お店が用意してくれたこの部屋は今までの給料じゃ、絶対に手が届かないような高級マンション。


落ち着かないけど、札束のためならば、このくらいの我慢は必要だ。


明美と秀は仲直りしたかな?


横になったまま煙草に火を点けた。


天上に上がっていく煙を見ながら、ふと昔のことを思い出してしまう。


秀は明美よりも一つ年上で、あたしが明美と出会った頃にはすでに付き合っていた。


今と変わらず、秀のことが大好きで……


好きすぎたせいで、明美から秀の側を離れたこともあった。


その時、初めて秀の明美に対する気持ちがわかったんだったな。


取り乱す秀も…

涙を流す秀も…

見たのは、あの時が初めてだった。


秀は暴走族なんてものに所属していたから、あたしとは住む世界が違うと思っていたけど、何も変わらなかった。


人を好きになることも。

仲間を大切にすることも。

勉強が嫌いなことも。

悩みだって、みんな似たようなものばかりで……