ギシッ…


眠りが浅かったせいか、寝返りをうった時に軋んだベッドの音で目を覚ましてしまった。


枕から落ちていた頭を元に戻すと、スーっと頬に違和感を感じる。


「またか」


誰もいないこの空間で、誰に向けたわけでもない、あたしの声はいつも行き場がないまま耳に残る。


頬に流れ落ちた水滴を拭いながら、カーテンから少しだけ差し込む光を見ないように寝室を出た。


スナックで働いていた頃に住んでいたアパートは狭かったけど、一部屋しかないという空間があたしにとっては楽だった。

ベッドの上からでも、大抵の物には手が届く。


トイレだって、こんな風に無駄な距離を歩かなくていい。


寝起きで怠い体をゆっくりと動かしながら、トイレへと歩いた。