「もう4時か……。」


カチカチと時を刻む柱時計に目を向けた。


この店には不釣合いな、大きな柱時計。


いやっ…――


この店に合っているのかもしれない。


会話がない店内に鳴り響く、針が進む音は心を穏やかにしてくれているように感じる。


一人じゃないと語りかけてくれているような……


こんなことを思っちまう俺は相当参っているのかも。



「本当だな。最近は一日が過ぎるのがあっという間でやになるよ。」



腕時計に視線を移した文さんを見ていると、ふとあの時の光景を思い出す。


文さんの左手首に浮き出たように残る、赤い線。


俺はもちろん文さんもそのことについては何も言わないけど、俺はその赤い線が文さんの冷たい瞳に関係しているような気がしてならなかった。