「カナ。俺はカナが何をしてても、誰といようと構わない。ただ、幸せでいてくれないと困るんだ。」



「幸せか……。」



あたしが幸せを感じていなければ困るだなんて、そんなこと軽々しく言わないでほしい。


今まで何の連絡も取り合っていなかったあたしに、突然そんなことを言われたって…――


宗の言葉は伝わらない。



「笑顔が見たい。」



「えっ?」



あたしの顔を見ていた宗の瞳が床へと下がる。



「カナの笑顔が見たい。それじゃないと俺は笑っていられない。」


「宗…?」



泣いているの?



膝の上で作った握りこぶしが少しだけ震えている。


ソファーに深くもたれ掛かっていたあたしは体を起こし、宗に手を伸ばした。



その瞬間に勢いよく顔を上げた宗。



あたしは反射的に伸ばした手を引っ込めた。



「カナ。笑ってくれ。頼むよ。話ならいくらでも聞く。力になれることがあるなら、どんなことでもするよ。だから……。」



目にいっぱいの涙を溜めて、辛そうに微笑む宗の左目から一粒の涙が零れた。



その涙は床へと落ち、絨毯の色を変える。