もう一度確かめるように俺は目の前で頭を下げるおっさんに指名したい名前を伝えた。


「ゆめかで指名したいんだけど…。」


「申し訳ありません。ゆめかは急にお店をやめることになりまして。もう、指名していただいてもここにはいません。」



聞き間違いでも、言い間違いでもなさそうだ。


ここをやめたなら、お前は一体どこに…――



「じゃあ、カナ……いやっ、ゆめかはどこに行った?」


「特に何も言っていなかったので、こちらではわかりませんね。」


「わからない……。」


俺がお前に会う手段はこの店しかないんだ。


そこをやめたなんて。


またお前に会えないのか……?



「他にも可愛い子は沢山いますので、中のほうへどうぞ。」


スッと触れられたおっさんの手を振りほどき、俺は店の外へと出た。