小さいけれど、ベランダのついているこのマンション。


空に少し近づけた気がして、気に入っていた。


でも、引っかかるのは明美の言葉。


あたしは浅葱に囲われた愛人。


その通りだと思う。


夜から抜け出せることに舞い上がって、浅葱の言葉を深く考えはしなかった。


でも、言われてみると……


夜を抜け出したわけではない。


前よりももっともっと深い夜の中へ、飛び込んでしまったのかもしれない。



吐き出した煙が風に乗り、あたしの元へと押し返される。



あたしの体は浅葱との契約で縛られてしまった。


明美に言われ、そのことに気付いたあたしの心はそこから抜け出したいと、もうはやもがき始める。


体についた汚れも、息苦しい暮らしも何も変わりはしない。


お金を手にするためには、必要なことらしい。


それなら受けて立とう。


この体が汚れすぎて、この夜空と同化してしまうその日まで……


あたしは金を追い求める。